富士山が平成25年(2013)6月22日に世界遺産に登録されたことは皆さんもご存じだと思います。一般的に世界遺産といわれているものには、文化遺産と自然遺産とがあり、さらに文化と自然を兼ね備えた複合遺産があります。
ちなみに平成25年には、和食が自然を尊重する心に基づいた食習慣としてユネスコ無形文化遺産「和食;日本人の伝統的な食文化」に登録されました。世界遺産が文化遺産・自然遺産・複合遺産という、有形の動かすことのできない文化財であるのに対して、こちらは音楽や工芸などの文化的所産である無形の文化財に属しています。
富士山は、世界遺産のどのジャンルで登録されているかご存じでしょうか。富士山は2つの評価が示されています。
ひとつは、霊峰富士の荘厳な姿が、いにしえから山岳信仰をはじめとする様々な信仰を育み、芸術や自然と調和した文化的伝統を生み出してきたこと。もうひとつは、富士山がいにしえから文学や絵画などの題材となる創造性の源泉であり、とりわけそれが描かれた浮世絵が西洋においてジャポニズムと呼ばれる影響を与え、芸術の発展に寄与したことと評価されています。
これらの評価から富士山は、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉-」として世界遺産の中でも文化遺産として登録されたのです。
さて、新春を迎え、縁起の良い初夢として昔から「一富士二鷹三茄子」といわれています。いの一番とされる富士山は、いにしえから霊峰として崇められてきました。その世界遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉-」を葛飾に居ながら身近に楽しめる所があります。それは銭湯です。
銭湯の背景画に富士山が描かれたのは、大正元年(1912)のことだといわれています。東京府東京市神田区猿楽町にあった銭湯「キカイ湯」の浴室の壁に初めて富士山が描かれ、これが評判となり、全国津々浦々の銭湯に富士山の壁画が描かれるようになりました。
区内には、このところ数が減ってしまいましたが、まだ多くの銭湯が営業をしています。たまには銭湯に行って、内風呂では味わえない開放感に心身をリラックスさせてみるのはいかがでしょうか。まち歩きの後の銭湯も格別です。
霊峰富士に抱かれた湯船に浸かり、いにしえから育まれてきた富士山と日本人との関わりに思いを馳せる。なんともおおらかで知的なひと時を身近な場所で満喫することができるはずです。
区内を散策するコースを考える時、あらかじめ銭湯の位置を確認しておくことも、葛飾区のまち歩きのコツの一つです。銭湯に馴染みのない方は、葛飾区銭湯組合連合会で年3回、区内の散策の後に銭湯を見学してから湯に浸かる「銭湯ウォーク」を開催していますので、ぜひご参加ください(以下の「葛飾銭湯」のホームページで、募集記事が掲載されます)。