年の瀬になると、寒々とした街中に紅鮮やかな寒椿が彩りを添え、街の所々で年末年始の準備に追われる姿が見られます。
今や「千ベロの聖地」(千ベロとは、千円でベロベロに酔えるというリーズナブルさの例え)と呼ばれている立石駅前の仲見世アーケードには、年末年始の風物詩となっている手作りの凧が飾られ、新年の準備に忙しい買い物客や、飲み屋の前で入店の順番待ちをしている人の目をなごませています。
立石仲見世は、戦後の闇市から起こったといわれ、1954年(昭和29)の夏に、店舗の連なる長屋建物と初代アーケードが設けられ、同年11月17日に「協同組合立石仲見世共盛会」が設立されて、現在まで続いてきています。
巷で「千ベロの聖地」といわれる前の平成のはじめ頃までは、普段の日の夕方には、買い物カゴを手にした買い物客で賑わい、土日は衣料品を求める客が行き来していました。
かつての立石仲見世は、小浅草的な雰囲気がありました。立石仲見世の長屋風の店舗が両側に軒を揃える佇まいは、東京下町の仲見世の老舗である浅草の仲見世を範としたものでした。浅草の本店から暖簾分けした甘味処や人形焼き屋さん、多くの衣料品屋さんが店を構えるなど、浅草の仲見世に似た雰囲気を醸し出していました。
昔は、もつ焼き屋さんが2軒だけでしたが、今では飲み屋さんをはじめとする飲食店が多く店を構え、「千ベロの聖地」として名を知られるようになりました。
立石仲見世の雰囲気は変わりましたが、変わらない年末年始の風物詩としてアーケードの屋根を飾る手作り凧があります。この「手作り凧コンテスト」は、立石仲見世共盛会が地元の子どもたちや仲見世を利用するお客様に呼びかけて行っているもので、今年で43回目を迎えます。 世相を反映したもの、漫画などのキャラクター、干支にちなんだもの、標語など、思い思いの絵柄や文字が色彩豊かに描かれています。飾り付けられた多くの凧の中から、商店街の各店舗が入選作を選びます。今回の凧は、1月16日(土)まで飾られます。
今では、子どもたちが凧揚げをする姿も少なくなりましたが、立石仲見世のアーケードは天井いっぱいに凧がひしめき合い、歳末商戦の売り上げに一役買っています。
2021年(令和3)の初詣は、密を避けるために分散参拝が奨励されています。初詣で今年一年の祈願をした後に、立石の仲見世に立ち寄り、正月気分を味わうのはいかがでしょうか。
また、今回揚げている凧は、例年とは少し趣が異なり、コロナ退散に願いを込められています。凧が大空高く舞い上がるように、景気も良くなりますように、そして一日も早くコロナ禍が収まり、日常がもどることを願っています。